【初学者向け】 統計学の勉強の始め方

統計学

記事の要約:統計学の勉強の始め方

この記事で学べること

  • 統計学を学ぶメリット
  • 統計学の勉強に必要な要素・手順
  • 初学者におすすめの書籍

この記事の結論

  • 統計学を学ぶと,手元のデータの信頼性を推し量ることができる.また隠れた関係性を見つけることもできる.
  • 統計学はほとんどのひとがニガテなので学んでおくと周囲と差がつく
  • 統計学で学ぶ要素としては大きく,「数学的要素」と「データ解析的要素」に分かれる.データ解析には簡単な解析用ソフトを使う方法やプログラミングを使う方法がある.
  • 初学者は簡単な解析用ソフトでデータ解析をしながら,統計学になじみを持つところから始めよう!次に数学的な部分はそれを補完するように勉強していくのがおすすめ.
  • 以下の書籍がおすすめ(それぞれの詳細は記事の後半にて)

なぜ統計学なんて勉強しなくちゃいけないの?

おそらくこのページを訪ねられた方は,
「統計学を勉強しなければいけない」
と何らかの理由で思いたったのだと思います.

入り口としては,上司から言われた,データを解析しなければいけなくなった,資格を取る必要がでてきた,研究のために漠然と使っていたけど不安になってきた,など様々だと思います.

ただ,多くの方が抱いている漠然とした疑問として「なぜ」統計学を学ぶ必要があるのか,そして「どうやって」統計学を学べばよいのかが挙げられます.そしてそれらを上司に聞いても,おそらく明快な回答は帰ってきません.なぜなら上司も,先輩研究者も,みんな理解していないから.
またgoogleで検索しても,「数学ばっかりで萎えた」「プログラミングを使うの!?」「なんか色々なソフトの名前がでてきてどれを使えば良いかわからない」という方が大半だと思います.私もそうでした.

これから新しいことを始めようというのに,理由も方法もわからずに勉強する,というのはちょっと酷い話ですよね.このサイトではそんな方々に対して,統計学を学ぶメリット,統計学を身につけるために必要な要素,勉強を始める手順,解析等に使うソフトの紹介をしていきたいと思います.
この記事では大きな方向性・手順のみを示していきますので,それぞれの詳細は,別の記事でゆっくりじっくりと解析していきます!

*この記事では,あくまでもこれから勉強を始める初学者の方に寄り添って,できる限りかみ砕いて説明を進めていきます.なるべく専門的な厳密性を失わないように心がけていますが,細かいところが気になる方は,また別の記事をご参考ください!

この記事を読んでほしいひと

まずこの記事を読んでほしい,この記事が役にたつと思われる対象者を挙げてみました.

この記事が役に立つと思われるひと
・統計学の勉強を始めたいけど,なにから始めてよいかわからない人
・職場などで急にデータ解析をしなければいけなくなったひと
・漠然と統計学をちゃんと勉強しなければ思っているビジネスマン・研究者・医療従事者

これを見ると,ビジネスマンも研究者も医療者もみんないっしょくたにして乱暴だな,と思われるかもしれません.しかし,統計学っていう学問は,データを扱う様々な分野で利用されているものであり,その根底にある理論はどの分野でも同じ統計学です.ビジネスの世界,経済学の世界,生物学の世界,医学の世界,どこで使っても全く同じです.
もちろんご自身の分野の例を使った説明の方が分かりやすいことは間違いありませんが,初学者の内は,あまり細かいことを考えずに,統計学の世界にとりあえず飛び込んでみるという意識が大切になると思います.

統計学を学ぶメリット

統計学を学ぶメリットとして,以下のことが挙げられます.

(1)手元のデータから推測された結果がどのくらい信用できるものなのかが分かる
(2)対策や処置の効果が統計学的に十分なものであるかどうかが検定できる
(3)隠れた関係性が見えてくる
(4)周囲と差がつく!

あまりお話がややこしくならない程度に(かつ専門家に怒られないように)説明すると,統計学の目的として(1)統計的推測と(2)統計的仮説検定 が挙げられます.

(1)統計的推測
 難しく聞こえますが,みなさんが学生の頃にテストの平均点を計算して,ご自身クラスのテストの点数の真ん中を推し量っていましたよね.それも実は統計的推測のひとつなんです.あとは受験のときに出てくる偏差値なんかも,実はデータの真ん中の値や,データのばらつき具合を推し量っているものなんです.だから実は結構身近なものなんですよね.
最初はあまり細かいことを気にしなくてもOKです.ただ,データの特徴を知るときには,データの真ん中の値や,そのばらつき具合とかを知ることによって,どのような特徴を持ったデータなのかを知ることができるのだな,くらいに理解しておいてください.どのような指標を使って推測すればよいかについては,また別の記事で説明します.

(2)統計的仮説検定
 即物的といいますか,より実践的な側面からは,こちらの方がみなさんの興味の対象になるかもしれません.たとえばバーゲンキャンペーンを実施したときの売り上げへの影響とか,治療や薬剤を処方・投与したときの血圧への効果とか,そういったものの効果量が,データのばらつきなども考慮した上で,十分に大きいものなのかどうかをテストする方法です.
これで統計的に十分に大きい(統計的に有意な効果があった,などと表現することが多いです)となれば,ある程度自信をもってその処置を進めることができますよね.量的なデータを扱うのであれば,分野問わずお世話になるところです.
どのようなデータにどのような検定方法を使えば良いかなどは,また別の記事で紹介します.

(3)隠れた関係性が見えてくる
統計学の応用的な(といってもソフトで簡単に解析できる程度のものですが…)手法を使えば、さまざまな要素が絡み合った現実世界のデータから,本来の処置の効果を推測することが可能になります.現実世界で起こっていることをより正確に捉えることができれば,その後の計画にも役立ちますよね.
実際にどのような解析方法などを勉強すれば良いかについては,また別の記事でじっくりと説明します!

(4)周囲と差がつく!
ここは結構重要な部分になるかもしれませんが,統計学って本当に多くの方がニガテ意識を持っています.原因は結構明白で「数学が出来なければ出来ない」という思い込みがあるからです.この後の勉強の手順でも説明しますが,統計学,特にデータの解析においては細かい理論は後回しにしても,まず体験することが出来ます.まずは自分が統計学を使えるんだという成功体験を得ることができる,これってモチベーションの面でもかなり重要です.
あと生物系や医学系の理系の学部出身の方でも,ほとんどの方は統計にニガテ意識を持っていいます.なぜなら大学1年生のときに教養科目でしぶしぶ履修した統計学講義でこてんぱんにされるからです.これで統計を好きになったというお話は本当に聞いたことがない.
そういった側面もあって,統計学を学んでおく,ある程度俯瞰できる能力を備えておくことは,周囲と差をつける大きな要因のひとつになります.最近では非常に多くの企業が統計学に関する基本的な素養を求めており,大企業などでは新卒に統計検定2級程度を受験させるところも結構聞きます.そういった面でも,ある意味実用的知識ですね.

統計学の勉強に必要な要素・手順(重要)

ここからがこの記事の一番重要なポイントになります.
統計学の勉強を始めようと考えている方は,まずgoogleで「統計学 勉強 始め方」などで検索されると思います.検索結果には,数学について,プログラミングについて,各種統計ソフトについて,統計検定の合格方法について,など様々なものが出てきます.そして,なにから勉強すればよいか分からなくなったかたも多いはず.そうなんです,統計学を勉強するときに,どんな要素を学ぶ必要があって,実用的な側面からは,どの手順でなにを学べばよいのか,ということがまとまっている記事が非常に少ない…困った…ということで,ここで簡単にまとめておきます.

まず,統計学を身につける(使える)ようになるために学習する要素は大きく以下の2つに分かれます.
(1)数学的な要素
(2)解析的な要素
   ・プログラミングを使う方法
   ・簡易的な解析ソフトを使う方法

(1)数学的な要素…もちろん統計学は確率論などの数的理論に基づいていますので,ここはとても大切な要素になります.ここを学んでおくのは非常に大切です.ただ…ただ…もう数学なんてしんどいよ!というのが本音だと思います.分かります.それにこれから学び始めるのに数学から勉強してたんじゃ,いつまでたっても実用にたどり着かなくて,モチベーションが続かないということも当然理解できます.大体挫折される方はこのパターンな気がします.
そこで私がおすすめするのは,(2)解析的な要素 ⇒(1)数学的な要素 の順番で勉強をすることです.まずは(2)解析的な要素の詳細を見ていきましょう.

(2)解析的な要素…統計学というのはデータありきの学問でもありますので,当然データを使います.なんとなくエクセルシートに数字が並んでいるものを,どうやって調理するのかくらいのイメージを持っておいてもらってまずは構いません.
このエクセルシートにあるデータを解析する方法やソフトはたくさんあります.科学の分野で統計の専門家がきちんと解析をする場合には,RやPython,SASなどのプログラミング知識が必要となるものを利用していることが多いです.また医師や生物学系の研究者が解析をするような場合には,プログラミングを使えない人が大半なので,市販のボタンクリックで解析をするSPSSやSTATAのようなソフトウエアを使っていることが多い印象です(あるいはエクセルの標準機能で解析をされているものも見ますが,解析の記録が残りにくいことや色々な理由からあまりおすすめはできません…).そのため,統計学を勉強し始めようとすると,検索結果にプログラミングやよくわからないソフトの名前がたくさん出てくるのです.
何はともあれ,適切なデータがあれば,統計ソフトを使って,解析ができるのだ(つまり統計的な推測や検定ができる)という印象をまずは持ってください.

さきほど,(2)解析的な要素を勉強してから(1)数学的な要素を勉強しようと提案しました.その手順や理由をご説明します.

手順1:無料の統計ソフトを使って,まずは解析を体験する.

  • まずはどんなことができるのかを知ることでモチベーションが維持できる
  • 実用に役立つことで学ぶ意欲が深まる
  • 使うソフト:EZR(理由:無料・使いやすい・研究レベルで利用できる

手順2:上記の解析で実際に使っている統計手法の詳細を数学的に学ぶ

  • 詳細を学ぶときには数学的な要素は必要になります
  • でもどこまで細かいところから勉強するか,は専門家でも意見が分かれます(数学の深淵まで除くのか,とりあえず公式レベルだけでも理解しておくのか,など)
  • 初学者はまずは公式レベルを抑えて,何をしているのか,を抑えるところからで十分

このように統計学を勉強する,といっても,複数の要素があり,それぞれの方が実際に統計学を使えるようになりたいのか,統計学検定に合格するなど数学的に勉強したいのか,によって目的が変わってくるのです.そのため,検索をしてもいまいち自分にフィットした結果が得られないという現象が起こってきます.そのあたりを上記の通り切り分けて考えると,整理しやすいかもしれません.
また統計学を勉強しなければ,と漠然と思っている方の多くは,実際に使えるようになりたいと思っている方が大半と思いますので,数学的な部分から始めてしまうと辛いんですよね.それぞれの要素の勉強方法についての詳細はまた別の記事でまとめます.

初学者におすすめの書籍

とにかくまずは易しく雰囲気を知りたいひと向け(導入)
ここに紹介する2つの書籍は,非常に分かりやすいく,初学者フレンドリーです.でもあくまでもストレスなく入っていくものであり,これだけを学んでも,統計学を使えるようにはなりません.

・マンガでわかる統計学 素朴な疑問からゆる~く解説(分かりやすい・安い)
…ほんとうにゆるく説明されており,非常に分かりやすく,そして安いです.

・統計学の図鑑
…子どもに教えるくらいの易しさで説明してほしい人向けです.うちの子どもも眺めながらある程度理解できていました.気になるところだけを開いてみても,雰囲気を掴むことができます.

ソフトを使いながら学びたいひと向け(導入~実践)
ここに紹介しているものは実際にデータを使って,無料ソフトEZRを使いながら解析を体験できます.事例が医学的なデータになってしまいますが,医学的に難しい言葉などは出てきませんし,上記で述べたように,分野が違っても応用できる内容なのでご安心ください.

  • 初心者でもすぐにできるフリー統計ソフトEZR(Easy R)で誰でも簡単統計解析
  • みんなの医療統計 12日間で基礎理論とEZRを完全マスター!

統計学が社会でどう役立っているかを感じたいひと向け(参考):
…いわずと知れた名著です.統計学が社会にどう役立っているのかが俯瞰できます.実際の解析手法などを学ぶような類のものではありませんので,モチベーションアップの読み物としてお勧めです.

  • 統計学が最強の学問である

数学的な内容も勉強してみたい人のおすすめ入門書:
一応,数学的な内容を勉強してみたい人には,以下の3つがおすすめです.ご存じの方も多いと思いますが,大学レベルで扱う「入門書」の類では,全く入門できません.教えてくれる専門家が周りにいるのが前提なくらいの難易度です(専門的厳密性を担保するには仕方がないのですが…).そのため入門書の中でも,特にやさしい,かつ将来的にも役立つようなものをピックアップしました.上から順番に学んでいくと,比較的ストレスが小さいかもしれません.特に「現代数理統計学の基礎」は初学者には結構ハードルが高いですが,これをマスターすれば統計検定1級くらいは合格できるレベルです.統計学入門(基礎統計学I)をマスターすれば,統計学2級くらいは楽勝で合格できると思います.
肌感覚で難易度の★をつけていますが,一般的な数理統計の入門書の難易度は★★★★★くらいの印象です…(笑)

  • よくわかる心理統計(難易度★*)
  • 統計学入門 (基礎統計学Ⅰ) (難易度★★*)
  • 現代数理統計学の基礎 (共立講座 数学の魅力) (難易度★★★*)

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